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ギターの演奏で耳にする「ギュイーン」という派手なサウンド。ロックミュージックなどでよく使われる、あのカッコいい音の名前が何なのか気になっていませんか。多くの方が、あのギュイーンと鳴らす棒(アーム)の使い方や、ピックスクラッチのやり方について詳しく知りたいと思っていることでしょう。
この記事では、「ピックスクラッチとは何ですか?」という基本的な疑問にお答えするのはもちろん、スクウィールというテクニックや、あまり知られていないギターのアラストレとは何かについても掘り下げていきます。
さらに、「ギターのグリッサンドとスライドの違いは何ですか?」や「グリッサンドとグリスの違いは?」、「ギターでフォールとは何?」といった、似ているようで少し違うテクニックの差異も明確に解説します。
ベースのグリッサンドとの比較にも触れながら、あなたの長年の疑問をスッキリ解消していきます。
この記事のポイント
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ギターのギュイーン!その奏法の名前とは
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ピックスクラッチとは何ですか?
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ギターで「ギュイーン」という音を出す代表的な奏法の一つが、ピックスクラッチです。これは、ピックの先端ではなく側面の部分を使って、ギターの弦、特に低音弦(4〜6弦)をこするようにして音を出すテクニックを指します。
なぜこのような音が出るかというと、エレキギターの4弦から6弦は「巻き弦(ラウンドワウンド弦)」という、芯線に細いワイヤーが巻かれた構造になっているからです。この巻き弦の表面にある凹凸をピックの側面でこすることにより、「ガガガ」「ギュイーン」といった独特のノイズが発生します。言ってしまえば、一種の効果音(ノイズ)を意図的に作り出す演奏方法なのです。
主にロックやヘヴィメタルといったジャンルで、楽曲のイントロや間奏、サビ前の盛り上がりなど、場面転換のアクセントとして効果的に使用されます。例えば、東京事変の楽曲「群青日和」のサビ前(1分10秒あたり)で聴けるのが、このピックスクラッチです。
豆知識:スクラッチノイズとも呼ばれます
ピックスクラッチは、その性質から「スクラッチノイズ」と呼ばれることもあります。「スクラッチ(scratch)」には「引っ掻く」という意味があり、まさに奏法の特徴を的確に表した呼び名と言えるでしょう。
ピックスクラッチの基本的なやり方
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ピックスクラッチは、コツさえ掴めば初心者でも比較的簡単に出せるテクニックです。しかし、安定してカッコいい音を出すためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは、基本的なやり方と成功させるためのコツを解説します。
1. 音をしっかり歪ませる
まず大前提として、ピックスクラッチはエレキギターの音を歪ませた状態で演奏します。クリーントーンではほとんど音が鳴らないか、非常に地味な音になってしまいます。ギターアンプのGAIN(ゲイン)を上げるか、オーバードライブやディストーションといった歪み系エフェクターを使いましょう。
GAINの目安は、普段の演奏よりも少し高め、時計の針で言うと12時以降に設定すると、迫力のあるサウンドが得やすくなります。
2. ピックの側面を当てる
通常の演奏ではピックの先端を使いますが、ピックスクラッチではピックの側面(エッジ)を使います。人差し指と親指でピックをしっかり持ち、手の向きを調整してピックの長い辺が弦に当たるように構えてください。
このとき、ピックを弦に対して垂直に当てるのではなく、少し斜めに傾けて押し当てるようにすると、スムーズに滑らせることができます。
3. 4〜6弦の巻き弦を狙う
前述の通り、ピックスクラッチは巻き弦の凹凸を利用する奏法です。そのため、狙うのは4弦、5弦、6弦です。1〜3弦のプレーン弦では、迫力のある音はほとんど出ません。
最初は6弦だけ、あるいは5弦と6弦の両方に当てるなど、やりやすい方法で試してみましょう。どの弦をこするかによっても、音の高さやニュアンスが変わります。
4. ブリッジ側からヘッド側へ動かす
ピックを弦に当てたら、ブリッジ(ギターのボディ側)からネックのヘッド(先端側)に向かって、弦の上を滑らせるように動かします。スピードを速くすれば短く鋭い「ギュイン!」という音に、ゆっくり動かせば「ギュイーーーーーン」と持続する音になります。曲のテンポや雰囲気に合わせてスピードを調整しましょう。
注意点:ピックと弦は消耗品
ピックスクラッチは金属の弦をプラスチックのピックで強くこするため、どうしてもピックが削れてしまいます。また、弦にも負担がかかります。迫力のある音を出すためには、ある程度の摩耗は仕方のないことと割り切りましょう。削れて弾きにくくなったピックは、演奏性も悪くなるため、早めに交換することをおすすめします。
出典:YouTube MUZYX ミュージックスチャンネル
アーミングを使うスクウィールという技
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もう一つの代表的な「ギュイーン」音、それがスクウィール(Squeal)奏法です。これは、ハーモニクス音とトレモロ・アームを使ったアーミングを組み合わせることで、ギターに叫び声や悲鳴(squeal)のような甲高い音を出させる、非常に派手なテクニックです。
ピックスクラッチが「ガガガ」という摩擦音であるのに対し、スクウィールは「キュイーン」「ギュワーン」といった、より音程感のある金属的なサウンドが特徴になります。
まさにギターの悲鳴!ザック・ワイルドやダイムバッグ・ダレルといったギタリストが得意とした、ハードロックやメタルには欠かせない飛び道具的なテクニックですね。
この奏法は、アームでの音程変化量が大きいフロイドローズなどのロック式トレモロユニットが搭載されたギターで特に効果を発揮します。基本的なやり方は以下の通りです。
- 右手でアームを持ち、アームダウン(音程を下げる)する。
- 音程が下がった状態で、左手の指でハーモニクス・ポイント(3, 5, 7フレットの真上など)に軽く触れる。
- ハーモニクス音を鳴らしながら、右手でアームアップ(音程を上げる)する。
この一連の動作を素早く行うことで、低い音から一気に甲高いハーモニクス音まで駆け上がる、強烈なサウンドを生み出せるのです。最初はタイミングを合わせるのが難しいですが、決まると非常にカッコいい効果が得られます。
注意点:ギターのセッティングも重要
スクウィールを多用する場合、ギターのセッティングも重要です。特に弦高が低すぎると、アームダウンした際に弦がフレットに触れて音が途切れてしまうことがあります。アームをスムーズに動作させるためにも、適切な弦高調整やメンテナンスが求められます。
出典:YouTube HIDEKIN GUITAR CHANNELチャンネル
あのギュイーンを出す棒、アームとは
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ギターから生えている金属の棒、通称「ギュイーン棒」の正式名称はトレモロ・アームまたはヴィブラート・アームと言います。このパーツが付いているブリッジ(弦をボディに固定する部分)全体をトレモロ・ユニットと呼びます。
アームの主な役割は、弦の張力を変化させて、音程を滑らかに上げ下げすることです。基本的な操作は3つあります。
- アームダウン:アームをボディ側に押し下げ、弦の張力を緩めて音程を下げる。
- アームアップ:アームをボディから引き上げ、弦の張力を高めて音程を上げる。(※ユニットの種類による)
- ビブラート:アームを小刻みに揺らし、音に揺らぎを与える。
このシンプルな機能を使って、さまざまな表現を生み出すことができます。ここでは代表的なアームの種類と特徴を簡単に見ていきましょう。
代表的なトレモロ・ユニット
種類 | 主な搭載ギター | 特徴 |
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シンクロナイズド・トレモロ | フェンダー・ストラトキャスターなど | 構造がシンプルで、ナチュラルな揺れが得意。ジミ・ヘンドリックスなどが使用。激しいアーミングには向かない。 |
フロイドローズ | HR/HM系ギター(Ibanez, ESPなど) | 弦をナットとブリッジでロックするため、チューニングが非常に安定している。大胆なアームアップやダウンが可能で、スクウィール奏法に最適。 |
ビグスビー | グレッチ、ギブソンのセミアコなど | レトロなルックスが特徴。音程変化の幅は狭いが、繊細で音楽的なビブラートをかけやすい。ブライアン・セッツァーなどが愛用。 |
ギターのアラストレとはどんな奏法?
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「アラストレ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、主にフラメンコギターで使われる「ラスゲアード」という奏法を指す日本での俗称です。
ラスゲアードは、右手の指(人差し指〜小指)の爪側を使って、弦を「ジャララーン!」と情熱的にかき鳴らすテクニックです。指を一本ずつ素早く振り下ろすことで、通常のストロークでは出せない独特のパーカッシブなアタック感と迫力を生み出します。
「アラストレ(arrastre)」はスペイン語で「引きずる」といった意味を持つ言葉ですが、奏法名としては「ラスゲアード(Rasgueado)」が一般的です。
このように言うと、アラストレはこれまで解説してきたピックスクラッチやスクウィールのような「ギュイーン」という金属的な音とは全く異なる、アコースティックで情熱的なサウンドを生み出すための奏法です。エレキギターで使われることは稀で、混同しないように注意しましょう。
ギターのギュイーン音に関連する奏法の名前
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グリッサンドとグリスの違いは?
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結論から言うと、グリッサンドとグリスは基本的に同じテクニックを指します。「グリッサンド(glissando)」が正式な音楽用語であり、「グリス」はその略称として、特にポピュラー音楽の現場で広く使われています。
グリッサンドとは、ある音から別の音へ、指を滑らせるようにして音程を滑らかにつなぐ奏法です。譜面上では「gliss.」という記号で表記されることが多く、日常会話やバンドメンバーとのやり取りでは「そこのフレーズ、グリス入れて」といった具合で使われるのが一般的です。
「グリッサンド」が正式名称で、「グリス」は愛称のようなもの、と覚えておけば問題ありません。どちらの言葉を使っても意味は通じます。
ギターのグリッサンドとスライドの違いは何ですか?
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グリッサンドと非常によく似たテクニックにスライドがあります。どちらも指を押弦したまま滑らせる点は共通していますが、両者には明確な違いが存在します。それは、「始点と終点の音程が明確に決まっているかどうか」です。
スライド(Slide)
スライドは、始点の音と終点の音が楽譜で明確に指定されている奏法です。例えば、「5フレットの音を弾いた後、ピッキングせずに7フレットまで指を滑らせて7フレットの音を出す」といったように、移動前と移動後の音程がはっきりと決まっています。メロディを滑らかにつなぐ目的で使われます。
出典:YouTube 萩原悠ギター教室
グリッサンド(Glissando)
一方、グリッサンドは始点か終点のどちらか(あるいは両方)の音程が曖昧な場合に使われることが多いです。例えば、「フレーズの頭で、低いフレットから目的の音に向かってシュッとシャクリ上げる」といった効果音的なニュアンスで使われます。音程そのものよりも、滑らせるという「動き」による表現を重視したテクニックと言えるでしょう。
出典:YouTube 萩原悠ギター教室
スライド | グリッサンド | |
---|---|---|
音程の指定 | 始点・終点ともに明確 | 始点か終点が曖昧なことが多い |
目的 | メロディを滑らかにつなぐ | 効果音的なニュアンス、勢いを加える |
譜面表記の例 | 2つの音符がスラーで結ばれ「S.」と表記 | 音符の前後から波線が引かれ「gliss.」と表記 |
ただ、実際の演奏現場ではこの二つが厳密に区別されずに使われることも多くあります。
ギターで使われるフォールとは何?
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フォール(Fall)は、ある音を弾いた後、意図的に音程を急激に下げながら音を消していく装飾的なテクニックです。その名の通り、音が「落ちていく(fall)」ような効果を生み出します。
これは、グリッサンドの一種と考えることもできます。フレーズの語尾で使われることが多く、音を鳴らした直後に押弦している指の力を抜きながら、ネックのヘッド側(低い音の方向)へ指を滑らせていきます。
ブルースやジャズで、フレーズの終わりに「デローン」といった、少し投げやりで気だるいニュアンスを出したいときによく使われますね。譜面では、音符から下に伸びる波線で表現されることが多いです。
フォールは、メロディを明確に演奏するというよりは、フレーズに表情や「味」を加えるためのテクニックであり、どこまで音程を下げるかは演奏者の感覚に委ねられます。
ベースのグリッサンドとの違いも解説
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グリッサンドはギターだけでなく、ベースでも頻繁に使われるテクニックです。奏法の原理(指を滑らせる)は全く同じですが、楽器の特性上、その役割やサウンドのニュアンスには違いが見られます。
ギターのグリッサンドは、ここまで解説してきたように、フレーズの装飾や効果音的な使われ方が多いです。一方、ベースのグリッサンドは、より音楽の根幹に関わる重要な役割を担うことがあります。
例えば、太い弦から生み出される「ブォーン」という迫力のあるグリッサンドは、楽曲に強烈な「うねり」や「グルーヴ」を生み出します。特にフレットのないフレットレスベースでのグリッサンドは、音程がシームレスに変化するため、非常に滑らかで歌うような表現が可能です。
もちろんベースでも装飾的に使われることはありますが、ギターに比べて、フレーズとフレーズをつなぎ、リズムの推進力を生み出すという、より土台に近い部分で活用されることが多いテクニックと言えるでしょう。
ギターのギュイーンという音の名前総まとめ
- ギターのギュイーン音の代表的な名前はピックスクラッチやスクウィール
- ピックスクラッチはピックの側面で巻き弦をこする奏法
- スクウィールはハーモニクスとアーミングを組み合わせる技
- ギュイーンと鳴らす棒の正式名称はトレモロ・アーム
- アームにはシンクロナイズドやフロイドローズなどの種類がある
- ピックスクラッチをやる際は音をしっかり歪ませることがコツ
- ピックは消耗品と割り切ってしっかり弦に当てる
- スクウィールはフロイドローズ搭載ギターで効果を発揮しやすい
- グリッサンドとグリスは基本的に同じ意味でグリスは略称
- グリッサンドとスライドの違いは音程指定の明確さ
- スライドは始点と終点の音が決まっている
- グリッサンドは始点か終点が曖昧で効果音的に使われる
- フォールは音を鳴らした後に音程を下げていくテクニック
- アラストレはフラメンコギターのラスゲアード奏法を指す
- ベースのグリッサンドはグルーヴを生む重要な役割を持つ