※本ページはプロモーションが含まれています。
エフェクターボードを組んで音を出した瞬間、「ブーン」「ジー」という不快なノイズに悩まされた経験はありませんか。そのノイズの多くは、エフェクターのグランドループが原因かもしれません。
この記事では、グランドループとは何か、その発生原理から、具体的なグランドループノイズ対策までを網羅的に解説します。
グランドループを回避する方法は?という疑問に答え、ジャンクションボックス利用時のグランドループ問題や、結束バンドを使ったエフェクターボードの配線まとめ方、さらには根本的な解決策となるグランドループアイソレートの重要性についても掘り下げていきます。やっかいなグランドループノイズ音を解消し、クリアなサウンドを手に入れるための知識を身につけましょう。
この記事のポイント
|
エフェクターのグランドループ基礎知識
|
グランド ループ と は何か?
ギターナビ・イメージ
グランドループとは、複数の電子機器を接続した際に、グランド(接地)の配線がループ状(輪っか状)になってしまう現象のことです。本来、オーディオ機器のグランドは、ノイズの基準点となる電位0V(ボルト)であるべきです。しかし、このループが形成されると、アンテナのように振る舞い、電源周波数に由来する電磁ノイズなどを拾ってしまいます。
その結果、「ブーン」や「ジー」といったハムノイズが発生し、オーディオ信号に混入してしまうのです。言ってしまえば、意図せずしてノイズを拾うための回路がシステム内に出来上がってしまっている状態です。エフェクターボードのように、多数の機材をケーブルで接続する環境では特に発生しやすく、多くのギタリストやベーシストを悩ませる問題の一つとなっています。
グランドループのポイント
複数の機器を接続することで、グランド線が輪っか状の回路を形成してしまう状態。このループがアンテナとなり、ノイズを拾う原因になります。
グランドループの原理をわかりやすく解説
ギターナビ・イメージ
グランドループが発生する根本的な原理は、接続された機器間でのグランド電位の差にあります。少し専門的になりますが、分かりやすく解説します。
例えば、エフェクターとアンプを別々の壁コンセントから電源を取っているとします。理想的には、どちらのコンセントのグランドも同じ0Vであるべきです。しかし、実際には建物の配線状況などにより、2つのコンセントのグランド間にごくわずかな電位差(電圧の差)が生じていることがあります。
この状態でエフェクターとアンプをシールドケーブルで接続すると、ケーブルのシールド線(グランド線)を通じて、電位の高い方から低い方へ微弱な電流が流れます。
この電流が流れることで、本来は1本であるべきグランドの経路が、電源ケーブルのアース線とシールドケーブルの2つの経路を持つことになり、結果としてループが形成されてしまうのです。このループに交流電源(50Hz/60Hz)から発生する磁界などが影響し、ノイズ電流が誘導される、というのがグランドループの基本的な原理です。
特徴的なグランド ループ ノイズ音
ギターナビ・イメージ
グランドループによって発生するノイズには、非常に特徴的な音があります。主に、「ハムノイズ」や「バズノイズ」と呼ばれるものです。
ハムノイズは、交流電源の周波数(東日本では50Hz、西日本では60Hz)とその倍音成分に起因する、低く「ブーン」と鳴り続ける音です。アンプのボリュームを上げても下げてもノイズの音量が変わらない場合、グランドループが原因である可能性が高いです。
一方、バズノイズは「ジー」というような、より高周波成分を含んだ耳障りな音を指します。これは、デジタルエフェクターやPC、照明の調光器(ディマー)などが発するデジタルノイズがグランドループを介して混入することで発生することがあります。
ノイズの種類に注意
ギターのピックアップが拾うノイズや、ケーブルの断線によるノイズとは種類が異なります。グランドループのノイズは、楽器を接続していなくても、また音を出していなくても鳴り続けるのが特徴です。
グランドループを回避する方法は?
ギターナビ・イメージ
グランドループによるノイズ問題を解決するための基本的な考え方は、非常にシンプルです。それは、「形成されてしまったループを断ち切る」か「ループが形成されないようにシステムを構築する」のどちらかです。
ループを断ち切る、と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、具体的なアプローチはいくつか存在します。主な回避方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 全ての機器の電源を一つのコンセントから取る
- 電気的に絶縁(アイソレート)されたパワーサプライを使用する
- グラウンドリフト機能を持つDIボックスなどを活用する
- 配線のレイアウトを工夫してループの面積を小さくする
これらの方法は、それぞれ異なるアプローチでグランドループの解消を目指すものです。次のセクションからは、これらの具体的な対策について、一つひとつ詳しく解説していきます。
エフェクターのグランドループ対策を実践
|
具体的なグランドループノイズ 対策
ギターナビ・イメージ
グランドループによるノイズが発生してしまった場合、原因を切り分けながら一つずつ対策を試していくことが重要です。ここでは、比較的簡単に行えるものから順に、具体的な対策を4つ紹介します。
電源を1箇所にまとめる
最も基本的で、最初に試すべき対策は、エフェクターボードに関連する全ての機器(エフェクター、アンプ、その他周辺機器)の電源を、一つの電源タップから取ることです。
これにより、各機器のグランド電位が限りなく等しくなり、グランドループが発生する主な原因である「電位差」を最小限に抑えることができます。
逆に言えば、アンプは壁のコンセント、エフェクターボードは別の延長コード、といったように電源を分散させることは、グランドループの発生リスクを高めるため避けるべきです。
高品質な電源タップを使用する
電源をまとめる際に使用する電源タップ自体の品質も、ノイズ対策においては無視できません。安価な製品の中には、内部の配線が貧弱であったり、ノイズフィルター機能がなかったりするものもあります。
オーディオ用や楽器用に設計された、ノイズフィルター機能付きの高品質な電源タップを使用することで、電源ラインから混入するノイズを低減させ、結果的にシステム全体のサウンドクオリティ向上に繋がります。
バランス接続を利用する
これは少し専門的な方法ですが、ミキサーやオーディオインターフェースに接続する際に非常に有効です。一般的なシールドケーブル(TSフォンケーブル)はアンバランス接続と呼ばれ、ノイズに弱い側面があります。
一方で、TRSフォンケーブルやXLRケーブル(キャノンケーブル)を用いたバランス接続は、ノイズを打ち消す仕組みを持っているため、外来ノイズに非常に強いです。機材が対応している場合は、積極的にバランス接続を選ぶことをお勧めします。
DIボックスを活用する
DI(ダイレクト・インジェクション)ボックスは、アンバランス信号をバランス信号に変換する機材ですが、多くのDIボックスには「グラウンドリフトスイッチ」が搭載されています。このスイッチは、入力側と出力側のグランド接続を物理的に切り離す(リフトする)機能です。これにより、接続機器間で形成されるグランドループを強制的に断ち切ることができるため、ノイズ対策として絶大な効果を発揮します。
DIボックスとは?
主にギターやベースなどのハイインピーダンス・アンバランス信号を、ミキサーなどが受けやすいローインピーダンス・バランス信号に変換するための機材です。レコーディングやライブでは必須アイテムの一つとされています。
グランドループ アイソレートの重要性
ギターナビ・イメージ
エフェクターボード内でのグランドループ対策において、最も重要かつ効果的なのが、「グランドループ アイソレート」、つまり電源を電気的に絶縁することです。これを実現するのが、「フルアイソレートタイプのパワーサプライ」です。
一般的なデイジーチェーン(数珠つなぎ)タイプの電源供給では、全てのエフェクターのグランドが内部で繋がっています。このため、デジタルエフェクターとアナログエフェクターが混在している場合などに、デジタルノイズがグランドを伝って他のエフェクターに影響を与えたり、エフェクター間でグランドループが形成されたりする原因となります。
一方、フルアイソレートタイプのパワーサプライは、各出力端子が変圧器(トランス)などによって電気的に独立しています。これは、まるで各エフェクターにそれぞれ専用のアダプターを使用しているのと同じ状態です。これにより、エフェクター間のグランドが完全に分離されるため、パワーサプライを介したグランドループの発生を根本的に防ぐことができます。
大規模なボードを組む場合や、ノイズにシビアな環境(レコーディングなど)では、アイソレートされたパワーサプライはもはや必須と言えるでしょう。初期投資はかかりますが、後々のトラブルシューティングの手間を考えれば、最も確実な投資です。
電源供給方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
デイジーチェーン |
・安価で手軽 ・省スペース |
・グランドループが発生しやすい ・ノイズが他のペダルに伝わりやすい |
フルアイソレート | ・グランドループを根本的に防止 ・ノイズに非常に強い ・各ペダルに安定した電源を供給 |
・比較的高価 ・サイズが大きくなる傾向がある |
ジャンクションボックスでのグランドループ
ギターナビ・イメージ
エフェクターボードの入出力を一箇所にまとめ、セッティングを迅速化するジャンクションボックスは非常に便利なアイテムです。しかし、その便利さの裏で、意図せずして巨大なグランドループを形成してしまう原因になることがあります。
通常、ギターからの入力はボードの手前側、アンプへの出力はボードの奥側など、物理的に離れた場所に配置します。ジャンクションボックスを使うと、ギターからのケーブル(INPUT)とアンプへのケーブル(OUTPUT)がボックスに集約されます。しかし、ボード内部では、信号は入力ジャックから一番最初のエフェクターへ、そして最後のエフェクターから出力ジャックへと、ボード全体をぐるりと一周するような長い経路を辿ることになります。
この時、シールドケーブルのグランド線も同様にボードを一周する大きなループを描くことになり、これがアンテナとなってノイズを拾いやすくなってしまうのです。
ジャンクションボックス使用時の対策
対策としては、ジャンクションボックスからの入力ケーブルと出力ケーブルを、ボードの裏側などでできるだけ近づけて配線し、ループが作る面積を物理的に小さくすることが有効です。また、製品によっては内部でグランドが独立しているものもあり、グランドループ対策が施されたジャンクションボックスを選ぶのも一つの手です。
エフェクターボードの配線 まとめ方
サウンドハウス・公式
ノイズに強いエフェクターボードを構築するためには、見た目の美しさだけでなく、電気的な特性を考慮した配線のまとめ方が重要になります。無計画にケーブルを這わせるのではなく、いくつかのルールに従って配線を行いましょう。
信号線と電源線は離す
基本中の基本として、オーディオ信号が流れるパッチケーブル(信号線)と、電源を供給するDCケーブル(電源線)は、できるだけ離して配線してください。特にパワーサプライ本体やACアダプターはノイズの発生源になりやすいため、これらの近くを信号線が通らないようにレイアウトを工夫することが大切です。どうしても交差させなければならない場合は、直角に交差させることでノイズの影響を最小限に抑えることができます。
ケーブルの長さは適切に
パッチケーブルやDCケーブルは、長すぎると余った部分がノイズを拾う原因になったり、他のケーブルと干渉したりします。逆に短すぎると、プラグ部分に余計なテンションがかかり、接触不良や断線の原因となります。エフェクター間の距離に合わせて、最適な長さのケーブルを使用することが理想です。自作できるソルダーレスケーブルキットなどを活用するのも良いでしょう。
ケーブルの品質も重要
もちろん、使用するケーブル自体の品質もサウンドに大きく影響します。シールド性能の高い、信頼できるメーカーのケーブルを選ぶことも、ノイズ対策の重要な要素です。
エフェクターボード配線は結束バンドで
適切にレイアウトしたケーブルを固定し、ボード全体を美しく仕上げるために、結束バンド(ケーブルタイ)とタイマウント(マウントベース)が非常に役立ちます。
タイマウントは裏面が両面テープになっている小さな土台で、ボードの好きな位置に貼り付けることができます。このタイマウントにケーブルを這わせ、結束バンドで固定していくことで、ケーブルがばたつかず、トラブルの少ないボードを組むことが可能です。
配線を固定する際には、前述の「信号線と電源線を分ける」というルールを意識し、それぞれのケーブル群を別々に束ねていくと良いでしょう。例えば、ボードの中央に電源線の束、その外側に信号線の束、というようにグループ分けして配線ルートを決めると、ノイズ対策とメンテナンス性の両面でメリットがあります。
結束バンド使用時の注意点
結束バンドを強く締めすぎるとケーブルを痛めてしまう可能性があるため、適度な力で固定してください。また、将来的にエフェクターの入れ替えを行う可能性を考えると、何度も付け外しができるリピートタイプの結束バンドを使用するのも賢い選択です。
地味な作業ですが、このひと手間がライブ本番での「音が出ない!」といったトラブルを防いでくれます。急がば回れ、ですね。
まとめ:エフェクター グランド ループ
この記事では、エフェクターのグランドループについて、その原因から具体的な対策までを詳しく解説しました。最後に、重要なポイントをリスト形式でまとめます。
- グランドループはグランド線がループを形成する現象
- 主な原因は接続機器間のグランド電位差
- 「ブーン」というハムノイズが発生するのが特徴
- 対策の基本はループを断ち切ること
- 全ての機器の電源は一つの電源タップにまとめる
- 高品質なノイズフィルター付き電源タップが有効
- フルアイソレートタイプのパワーサプライが最も効果的
- アイソレート電源は各出力が電気的に独立している
- これによりペダル間のグランドループを根本的に防ぐ
- DIボックスのグラウンドリフト機能も強力な対策となる
- ジャンクションボックスは大きなループを作る可能性に注意
- 配線時は信号線と電源線をできるだけ離す
- ケーブルは適切な長さのものを使用する
- 結束バンドとタイマウントで配線をきれいに固定する
- ノイズのないクリアなサウンドのためには丁寧な配線が不可欠