ギターアンプをスピーカー代わりに使う方法と注意点

アンプ

エレキギターを弾く方なら、練習や音楽鑑賞のために、手持ちのギターアンプをスピーカー代わりに使えないかと考えたことがあるかもしれません。実際に、ギターアンプのAUX端子などを利用すれば、ギターアンプとiPhoneの接続や、PCスピーカーとしての活用は可能です。これはベースアンプをスピーカー代わりに使う場合も同様です。しかし、ギターアンプとオーディオスピーカーの違いを理解しておかないと、期待した音質が得られなかったり、機材を傷めたりする可能性もあります。この記事では、ギターをスピーカーで鳴らす具体的な方法から、そもそもスピーカーを鳴らすのにアンプは必要なのかという基本、さらにはギターアンプのヘッドだけで音は出るのか、そして最も重要なアンプでやってはいけないことは何か、といった疑問まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

この記事のポイント

  • ギターアンプを音楽スピーカーとして使う具体的な接続方法
  • スマホやPCなど、機器別の接続に必要なアイテム
  • なぜギターアンプが音楽鑑賞に向かないと言われるのか
  • アンプやスピーカーを安全に扱うための重要な注意点

ギターアンプをスピーカー代わりに使う方法

  • ギターアンプのAUX端子を活用する
  • ギターアンプとiPhoneの接続方法
  • ギターアンプをPCスピーカーにするには
  • ベースアンプをスピーカー代わりにする
  • ギターをオーディオスピーカーで鳴らすには

ギターアンプのAUX端子を活用する

ギターナビ・イメージ

ギターアンプをスピーカーとして利用する最も簡単で一般的な方法は、AUX IN(オグジュアリーイン)端子を使用することです。

AUXとは補助的な入力端子を意味し、多くの家庭用小型アンプに搭載されています。ここにスマートフォンや音楽プレイヤーなどを接続することで、アンプからギターの音と音楽を同時に出力できるようになります。これにより、好きな曲に合わせて演奏する、いわゆる「マイナスワン練習」が手軽に実現可能です。

接続には、両端が3.5mmステレオミニプラグになっている「AUXケーブル」を使用するのが一般的です。アンプを置く場所とスマホを操作する場所を考慮すると、ケーブルの長さは少し余裕のある3m程度のものを選ぶと取り回しが良くおすすめです。1m程度の短いケーブルだと、演奏中にスマートフォンが引っ張られてしまうこともあるため注意が必要となります。

AUX機能を使うメリット

AUX機能の最大のメリットは、バンドセッションを想定した練習が自宅でできる点です。スマホのスピーカーから直接音楽を流すと、ギターの音量に負けてしまいがちですが、AUXを使えば1つのアンプからバランスの取れた音量で両方を聴くことができます。これにより、曲のリズムや構成を正確に捉えながら練習の質を向上させることが可能です。

ちなみに、AUX端子がない古いアンプや大型アンプでも、インプット端子に変換プラグを使えば音を出すこと自体はできます。ただし、これは後述するように音質面でのデメリットが大きいため、あくまで緊急的な手段と考えるのが良いでしょう。

ギターアンプとiPhoneの接続方法

ギターナビ・イメージ

iPhoneとギターアンプを接続する場合、いくつかの方法が考えられます。どの方法を選ぶかによって、必要な機材や得られる音質が変わってきます。

有線で接続する方法

最も手軽なのは、前述のAUXケーブルを使った有線接続です。ただし、最近のiPhoneはイヤホンジャックが廃止されているため、「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」が別途必要になります。

もう一つの方法は、「オーディオインターフェース」を介して接続するやり方です。これは、ギターの信号をiPhoneが認識できるデジタル信号に変換する機材で、IK Multimedia社の「iRig」シリーズなどが有名です。オーディオインターフェースを使えば、GarageBandのような音楽アプリで音作りをしたり、自分の演奏を録音したりと、活用の幅が大きく広がります。

ワイヤレス(Bluetooth)で接続する方法

ケーブルの取り回しが煩わしいと感じる方には、Bluetooth接続がおすすめです。アンプ自体にBluetooth機能が搭載されているモデルであれば、ワイヤレスでiPhoneから音楽を再生できます。代表的なモデルにはBOSSの「KATANA-AIR」やPositive Gridの「Spark MINI」などがあります。

補足:ヘッドホンアンプという選択肢

NUXの「Mighty Plug」のように、ギターに直接挿して使うヘッドホンアンプも人気です。これらの多くはBluetooth機能を搭載しており、iPhoneから再生した音源とギターの音をミックスしてヘッドホンで聴くことができます。アンプから音を出さずに練習できるため、夜間や集合住宅での練習に最適です。

ギターアンプをPCスピーカーにするには

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ギターアンプをPCのスピーカーとして使うことも可能です。これにより、PCでの音楽鑑賞や動画視聴の際に、より迫力のあるサウンドを手軽に楽しむことができます。

接続方法はiPhoneの場合とほぼ同じです。PCのヘッドホン出力端子と、ギターアンプのAUX IN端子を3.5mmステレオミニプラグのAUXケーブルで接続するだけです。もしPC側にヘッドホン端子がない場合や、より高音質を求める場合は、USBオーディオインターフェースを利用する方法もあります。

PCと接続する場合、PCから発生するノイズをアンプが増幅してしまうことがあります。もし「サー」や「ブー」といったノイズが気になる場合は、PCとアンプの電源を別のコンセントから取る、USBケーブルを品質の良いものに変える、といった対策を試してみると改善されることがありますよ。

ただし、注意点として、ほとんどのギターアンプはステレオ再生に対応していないモノラル仕様です。そのため、左右に広がるようなステレオ音源を再生しても、音が中央にまとまって聴こえることになります。音楽鑑賞が主目的であれば、やはり専用のPCスピーカーを用意する方が満足度は高いと言えるでしょう。

ベースアンプをスピーカー代わりにする

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ベースアンプも、ギターアンプと同様にスピーカー代わりに利用することが可能です。接続方法も全く同じで、AUX IN端子にスマートフォンや音楽プレイヤーをつなぐだけです。

むしろ、音楽鑑賞という点においては、ギターアンプよりもベースアンプの方が適している場合があります。その理由は、スピーカーの特性にあります。

ギターアンプのスピーカーは、ギターの美味しい音域である中音域が強調されるように作られており、高音域や低音域はカットされる傾向があります。一方、ベースアンプは、ギターアンプに比べて再生周波数帯域が広く、特に低音をしっかり再生できるように設計されています。このため、完成された音楽音源を再生した際に、ギターアンプよりもバランスの取れたサウンドで聴こえることが多いのです。

ただ、これもあくまで「オーディオ用スピーカーと比べれば劣る」という範囲の話です。本格的な音楽鑑賞には向きませんが、練習のために音源を確認したり、BGMを少し大きめの音で流したりする用途であれば、十分に活用できるでしょう。

ギターをオーディオスピーカーで鳴らすには

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ここまではアンプをスピーカー代わりに使う話でしたが、逆に「ギターを普段使っているオーディオスピーカーで鳴らせないか?」と考える方もいるかもしれません。

結論から言うと、機材を正しく組み合わせれば可能です。しかし、ギターから出ているケーブルを直接スピーカーに接続しても音は出ません。

ギターのピックアップが生成する音声信号は非常に微弱なため、スピーカーを振動させるほどの力がありません。そこで、信号を増幅させる「アンプ」が必要になります。この仕組みを理解することが重要です。

必要な機材

  1. オーディオインターフェース:ギターの信号をPCやスマホに入力するための機器です。
  2. アンプシミュレーター:PCやスマホのアプリ上で、ギターアンプの音を再現するソフトウェアです。
  3. PCやスマートフォン:アンプシミュレーターを動作させるために必要です。
  4. オーディオスピーカー:PCなどから音声を出力します。アンプを内蔵した「パワードスピーカー」や「アクティブスピーカー」と呼ばれるタイプが一般的です。

接続の流れは、「ギター → オーディオインターフェース → PC(アンプシミュレーター) → スピーカー」となります。この方法であれば、大きなアンプを置くスペースがない場合でも、既存のPC環境でギターの練習が可能になります。音作りもアプリ上で自由自在に行えるため、非常に便利な選択肢の一つです。

ギターアンプをスピーカー代わりに使う際の注意点

  • ギターアンプとスピーカーの根本的な違い
  • スピーカーを鳴らすのにアンプは必要なのか
  • ギターアンプのヘッドだけで音は出るのか
  • アンプで絶対にやってはいけないことは何?

ギターアンプとスピーカーの根本的な違い

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ギターアンプをスピーカー代わりに使えるのに、なぜ音質が良くないのでしょうか。それは、ギターアンプとオーディオ用スピーカーでは、その役割と設計思想が根本的に異なるからです。

オーディオ用スピーカーの目的は、CDや音楽配信サービスなどの「完成された音源」を、できるだけ原音に忠実に、フラットな特性で再生することです。高音から低音まで幅広い周波数帯域を偏りなく再生できるように設計されています。

一方、ギターアンプはそれ自体が「ギターの音を作る」ための楽器の一部です。ギターから送られてくる信号をただ大きくするだけでなく、意図的に特定の周波数帯域を強調したり、歪ませたりすることで、「エレキギターらしい音」に加工する役割を担っています。特にスピーカーユニットは、中音域に強いクセ(ピーク)を持たせ、高音域や低音域をカットする特性を持っているものが大半です。

特性の違いを比較

  オーディオ用スピーカー ギターアンプ
目的 完成された音源を忠実に再生する ギターの音を積極的に加工し、作る
周波数特性 フラットで幅広い帯域を再生 中音域にピークがあり、高域・低域はカット気味
再生方式 ステレオ(左右2ch)が基本 モノラル(1ch)が基本

この特性の違いにより、ギターアンプで音楽を聴くと、音がこもって聴こえたり、左右の広がりが感じられなかったりするのです。これは「古いラジオのような音」と表現されることもあります。

スピーカーを鳴らすのにアンプは必要なのか

「スピーカーを鳴らすのにアンプは必要か?」という問いの答えは、「基本的には必要」です。

前述の通り、スマートフォンや音楽プレイヤーから出力される音声信号は非常に小さく、それ単体ではスピーカーユニットを十分に振動させることができません。そこで、信号を「増幅(Amplify)」する装置、つまりアンプ(Amplifier)が必要になるのです。

アンプとスピーカーの関係

よく混同されがちですが、アンプとスピーカーは全く別の役割を持っています。

  • アンプ:音の信号を増幅する「増幅器」。
  • スピーカー:増幅された電気信号を空気の振動(=音)に変える装置。

イヤホンやヘッドホン、あるいは多くのPCスピーカーは、機器内部に小型のアンプが内蔵されているため、直接つなぐだけで音が出ます。このようなスピーカーは「アクティブスピーカー」や「パワードスピーカー」と呼ばれます。一方、アンプを内蔵せず、別途パワーアンプが必要なスピーカーは「パッシブスピーカー」と呼ばれ、本格的なオーディオシステムやPAシステムで使われます。

つまり、私たちが普段「スピーカー」と呼んでいるものの多くは、実は「アンプ内蔵スピーカー」なのです。ギターアンプも、アンプ部とスピーカー部が一体になった「コンボアンプ」が一般的であるため、両者が混同されやすいと言えます。

ギターアンプのヘッドだけで音は出るのか

 

結論から言うと、ギターアンプのヘッドだけでは音は出ません。

ライブハウスやスタジオでよく見かける、上下に分かれたタイプの「スタックアンプ」。この上段部分が「アンプヘッド」、下段部分が「スピーカーキャビネット」です。

  • アンプヘッド:プリアンプ(音作り)とパワーアンプ(音の増幅)の機能を持つ部分。
  • スピーカーキャビネット:スピーカーユニットが格納された箱。

アンプヘッドの役割は、あくまでギターの信号を増幅してスピーカーキャビネットに送ることです。最終的に音を空気の振動に変えるのはスピーカーキャビネットの役割なので、ヘッド単体では音を鳴らすことができません。

警告:スピーカー未接続での電源投入は絶対にNG!

特に真空管を使ったアンプヘッドの場合、スピーカーキャビネットに接続しない状態で電源を入れるのは絶対にやめてください。パワーアンプから出力された強力な信号の行き場がなくなり、アンプ内部のトランスなどの部品に深刻なダメージを与え、高額な修理が必要になる故障の原因となります。これは最も基本的な、そして重要なルールです。

ただし、近年のアンプヘッドの中には、レコーディング用途などを想定してスピーカーを接続しなくてもライン出力ができる「ロードボックス」機能や「スピーカーシミュレーター」を内蔵しているモデルもあります。そうした特殊な機能がない限りは、必ずスピーカーキャビネットと正しく接続してから電源を入れるようにしましょう。

アンプで絶対にやってはいけないことは何?

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アンプは精密な電子機器であり、間違った使い方をすると故障の原因となります。特に初心者がやってしまいがちな、絶対に避けるべき行為がいくつかあります。

① 音量が出た状態でシールドを抜き差しする

アンプの電源が入っていて、ボリュームが上がった状態でギター側のシールド(ケーブル)を抜き差しすると、「ブチッ!」という非常に大きなノイズ(ポップノイズ)が発生します。この衝撃はスピーカーユニットに深刻なダメージを与え、最悪の場合、スピーカーが破損して音が出なくなります。シールドを抜き差しする際は、必ずアンプのボリュームをゼロにするか、スタンバイスイッチをオフにする習慣をつけましょう。

② スピーカーキャビネットを接続せずにヘッドの電源を入れる

前述の通り、これは真空管アンプヘッドにおいて最も危険な行為です。アンプヘッドの出力インピーダンスとキャビネットのインピーダンスを合わせることも重要です。値が合っていないと、アンプの性能を最大限に発揮できないだけでなく、故障のリスクも高まります。

③ アンプの上に飲み物を置く

練習中、アンプの上に飲み物を置きたくなるかもしれませんが、絶対にやめましょう。アンプは振動しますし、何かの拍子に倒して液体をこぼしてしまうと、内部の電子回路がショートして一発で故障します。感電の危険性もあり、非常に危険です。

これらのルールは、自分自身のアンプはもちろん、スタジオやライブハウスの機材を使う際にも必ず守るべきマナーです。高価な機材を壊してしまうと大変なことになりますから、正しい知識を持って大切に扱うことを心がけましょう。

ギターアンプをスピーカー代わりに使う総括

  • ギターアンプはAUX端子を使えばスピーカー代わりにできる
  • AUXがない場合はインプット端子と変換プラグでも音は出せる
  • ただしインプット端子経由では音質が大きく劣化する
  • iPhoneとの接続にはLightning変換アダプタが必要な場合がある
  • オーディオインターフェースを使えば録音や音作りも可能になる
  • PCとの接続もAUXケーブル一本で手軽に行える
  • ベースアンプはギターアンプより音楽再生に向いている傾向がある
  • ギターアンプはモノラル再生が基本でステレオの広がりはない
  • ギターアンプのスピーカーは中音域に特化したクセのある音
  • オーディオスピーカーは原音を忠実に再生するフラットな特性を持つ
  • スピーカーを鳴らすには信号を増幅するアンプが不可欠
  • アンプヘッド単体では音を出すことはできない
  • スピーカー未接続でヘッドの電源を入れるのは故障の元で厳禁
  • 音量が出たままシールドを抜き差しするとスピーカーを傷める
  • アンプの上に飲み物を置くのは非常に危険なため避ける
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